違う立場の人が、力を合わせ新しいものをつくる
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地方分権が叫ばれ、この島根では、その一環としての市町村合併が、全国に先駆け進みました。しかし、分権の道は未だ半ばと言われます。
「自治体行政(県・市町村)がどうなったのか、今後どうしていくべきか」を探るため、当面、県内7市・町長のインタビューをお願いし、「市町村合併の光と陰」を探っているところです。
第一段は、市制施行なった雲南市の速水市長。「協働」のまちづくりのため、予算を投じ、公民館を拠点とした「地域自主組織」づくりを進める雲南市。地方が「やばい」との危機感も聞かれました(文責:こむろ寿明)。
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−合併に至る過程で、一番苦労した点をお聞かせ下さい。
雲南は、島根県が石見部と出雲部に別れ、出雲部の南ということで雲南地域。1,200平方キロの広さの大きな盆地です。
以前から広域的な地域づくりに熱心に取り組んできた経緯があり、消防とか病院、斎場とか屎尿処理とか、合併前の直近には、介護保険の受け皿を10町村でやるなど、一体感を持った取り組みがなされてきました。
そういう経緯の中で、平成12年の10月頃、「平成の大合併」の大合唱が国を挙げてなされ、島根県も全国に先駆けて合併パターンが示されました。
雲南地域は3つのパターンで、@大原郡3町に三刀屋が加わる、A仁多・横田、B旧飯石郡の三刀屋を除いた吉田・掛合・赤来・頓原、の3つに分かれたほうがいいのではないかと・・・。
それまで雲南地域は広域連合でまとまっていたので、「なんでだや」という戸惑いがありました。また、一部事務組合とか広域連合とかでというのだったら話は分かるが、「何で合併せんといけんや」という思いも、各町村民のみなさんにはあったと思います。
結果的に雲南市、飯南町、奥出雲町ができ、その枠組みは、仁多2町が県のシナリオ通りでしたが、奥出雲町にしても、雲南市にしても、県が描いていたパターンとは違っていた。県は、旧大原郡3町と三刀屋、旧飯石郡の5町村から三刀屋を除いた4つ(で合併を)と言っていましたが、その間を取ったような形になりました。
行政を預かる者として、「このまま単独では成り立たない」というのを肌身で分かっており、「なんとか合併でまとめなくては」という気持ちでした。しかし、分かってはいても、必要性というのは「イマイチ理解されていなかった」というのが苦労でした。
それから、合併の枠組みが決まってから、合併協議会を設立してもめたのは、新庁舎をどこに置くのか(という点)です。結局3案に絞られましたけど・・・。
合併の必要性を理解していただくことと、新庁舎の位置。その二つが合併にいたる苦労です。
−合併して一番よかった点をお聞かせ下さい。
雲南市になったことで、6町村の地域資源を、雲南市として一体的に活かすことができる。もう一つは、各構成町村が良かれと思ってそれぞれ進めてきた各市町村の施策を客観的に見ることができる。この2つかな・・・。
それまでは、各地域で「あれもこれも」の選択だったのが、合併後は、「あれかこれか」を選択しなくてはならず、事業の必要性を客観的に見ざるを得ないということです。
−雲南市がめざすこれからのまちづくりをお聞かせ下さい。
今日たまたま青少年健全育成協議会があり、各町村によって、公民館の活動としてやってきたところもあるし、やってないところもある。
雲南市が発足してめざすところは、「市民が主役のまちづくり」を推進していくということで、「地域自主組織」をつくる。その拠点として公民館を位置づけしようとしており、公民館で、社会教育や生涯教育をやってもらわなければならない。
各町村それぞれのまちづくりの歴史はありますが、余りにもデコボコがありすぎ、平準化するために、パターンをつくり、規約・要綱をつくっていこうと話したところです。A町は公民館活動をこんなにやっている、A町の公民館活動が10とすれば、B町の公民館は3しかしてない。「あと7つぐらいされたらどうですか」と、パターン化して、モデルケースをつくって取り組むよう各地域で話し合っていただく・・・。
「いっぺんにポンとはできないが、少しずつ努力して近づこう」と話しました。残念ながら、最初の平成17年度の活動経過を踏まえ、平成18年度はまだ地ならし期間というところです。
例えば、大東町の公民館は、本来社会教育上の拠点ですが、もっと多くの仕事をしておられます。いろんな事業の通帳を20ぐらい持ち、生涯教育もあるし社会教育、時にはPTA活動もやっておられるし、デイサービスも取り掛かろうとしておられる。
本当は、公民館主事は、公民館法に則った事業だけをやれば楽です。それに留まらず、本当は自治会とか地域の活動としてやらなくてはいけないことが、公民館活動に入り込んでおり、オーバーワークで、「なんでこんなことまで」と(ぼやきもでています)。
雲南市の「地域自主組織」は、ミニ役場的なことをめざしています。大東の公民館がやってこられたことを、「地域自主組織」としてやろう。いろんなことをやっておられる今の公民館の活動を、できるだけ他の地域に広げていけたらと思っています。
お手本にしているのは、旧佐田町の「橋波地区」。4集落80世帯ぐらいで、それ一手に引き受けているキー・パーソンがいらっしゃる。それが大きな要素ですが、われわれがめざしているのも、「地域マネージャー」を置いて「地域自主組織」をつくりあげていこうと・・・。
大東町には振興会が8つあり、雲南市になり、そこに一人ずつ地域マネージャーを置き、橋谷地区並にやろうとしておられますが、なかなか一気にそこまでできるところとできないところがあります。
公民館が加茂はなく、吉田が2つ、加茂と吉田は、行政と自治会がダイレクトでつながっているわけです。あとはブロック単位に分かれていて、連合自治会的なものがあり、その核が公民館です。大東が8ブロック、木次が8ブロック、三刀屋が7つ、掛合が7つ、吉田が16自治会、加茂が54自治会。ブロック化しているところは「地域自主組織」がそのまま。三刀屋の場合は7つに分かれていますが、今度作られようとしている「地域自主組織」は5つです。
全部で44の「地域自主組織」を発足する予定になっており、平成17年度末で24でき、今年度いっぱいで全部発足する予定です。それぞれ、活動に差がでますが、仕方がない。修正しながらやっていきます。
「地域自主組織」は財源が必要です。年間で7,000万、その3分の1の2,300万円を雲南市全体でやることに、後の4,700万円を6町村で分けています。
向こう5年間、毎年出していきます。3分の1の部分に食い込んでいくのかなと思いますが。平成17年度は7,000万円の内3,000万円しか使われていません。市の「ふるさとづくり基金」3億5,000万円を充てています。
*公民館の職員は、嘱託職員。館長の任期は2年、主事が1年交代。ずっとやっている所もあり、手当てもばらばら。そういう点も平準化したいとのこと。
−合併して困っていることをお聞かせ下さい。
困っていることでは、やっぱり地域エゴというのがまだあります。
市政懇談会を今年度7月30日までに34箇所やろうとしていて、昨日までで14箇所終わり、市政懇談会だから仕方がないことですが、自分の地域の話題しか出ない。
それともう一つは、議会の一般質問も雲南市全体のとらえ方ではなくて、自分の出身のところにとかく話が行きます。職員の場合には、あちこちいろんな部署にちりばめられて、自分のところのことばかり考えているわけにはいきません。
これは、地ならし期間であり、やむを得ないことではありますが、できるだけ早く、市民のみなさん、議員のみなさん、全市的な視野を持っていただきたい。
−合併の目的である市民との「協働」は進んだのでしょうか?
雲南市の場合、「協働」ということを強く意識することによって、地域の一体化というものを推進しないといけないと思います。
というのは、合併して553平方キロの広さになり、例えば忌部から大東に入り、掛合の一番出雲市に近い波多地域を突き抜けるのに1時間15分ぐらいかかる。54号線で松江市宍道から加茂に入って飯南町へ抜けるまで、やっぱりそれぐらいかかる。
そんなところで、地域の一体化をどうするのか。市役所のあるところを中心部と言うならば、離れているという意味での周辺部、大東町の潮地域とか掛合町の波多地域というのは、それぞれのまちづくりを自らの手でやろうとした時に、中心部の三刀屋のインターがある地域のにぎわい度の高い地域と同じようなことをしようとしても、それは無理。逆に、にぎわい度の高い中心部が、自然を大切にしたり安心・安全な食づくりをしようとしている周辺部のまちづくりと同じようなことをしようとしても無理。
だから、各地域が、他と比較するのではなくて、自分たちの地域を10年後にどうしようかという目標を立ててそれに向かって(やる)。10年後に振り返って、前より良くなったという実感を地域のみなさんが共有できれば(いい)。
努力をする中で、色々な情報交換の仕掛けづくりをやりつつありますが、そういう中で、それぞれががんばっていることを認め合い、努力をして、その中で一体感が醸成できる。それぞれの地域の取り組みが、まさに「協働」という格好でやられることによって、5年後、10年後に良かったなということを可能にする。
「協働」というのは、住民のみなさんが行政に任せっぱなしではなくて、行政がやらなかったら、「こういう方法があるんじゃないか」「こういう方法でやりたい」という協力をし合う(こと)。辞書を開いたときに「きょうどう」には共に働くのと、協力して働くのとありますが、やっぱりこの「協働」というのは、違う立場の人が力を合わせて新しいものを作り上げていくという意味の「協働」だという意識が大切じゃないかと思って、これから「協働」という言葉を使っていきたい。
雲南市の場合、旧6町村の総合センターを残し、基本的には、合併前に市民のみなさんが役場に行けば受けることのできた住民サービスは、合併後も旧役場、新総合センターで受けることができるようにしています。今まで役場でできていたことが市になったからできないことはないと思っています。
−島根県に望むことは何でしょう?
島根県の場合、59市町村から21市町村になり、よく言えば、基礎自治体の現場処理能力が高まった、専門的知識を持った職員を抱えるキャパが多くなったということですから、分権は財源をくっつけてどんどんしてもらって、できることは現場の市町村でやるべきだと思いますし、そうならざるを得ない。
そうすると、県が果たす役割というのは少なくなってきますから、県の職員さんも余ってくる。県の職員さんは優秀ですから、「私は出身の自治体へ帰る」と、市町村のために誇りをもって帰ってくだされば言うことないです。
逆に、21の市町村になり、機能が少なくなる方向の県であっても、21市町村がまとまって広域的にやるような仕事があると思います。例えば国保とか、できれば介護保険とか、消防とか。広域でやっていることを、地方分権の逆玉で、市町村から引き上げてもらいたい。思い切ったやり方をしなくてはいけないと思います。
いままでは、権限を「くれ、くれ」と言っていたけど、もらった時に受ける人材がいるかとか、お金が入ってくるかとか(心配が)ありましたが、21市町村になったから(やれる)。雲南市も人材が増えたから本当にやりたいですね。
ただ、市にも余力のある所とない所があります。松江市や出雲市のように何でもできそうな所と比べると、雲南市はまだまだです。
もう一つ、県も市町村もあげて島根県は心して取り掛からなければならないことは、今度の合併によって1,500人の首長がいなくなった、議員もいなくなったので、地方の声が届きにくい。それだけ戦力ダウンです。
余談ですが、地方に支えられてきた自民党が、合併によって地方の自民党員が少なくなったのに、選挙でどうして勝ったのかというと、都市部の意見に支えられて勝った。
だから、地方の声は、自民党の中でも、選挙区で取り上げられない状況があるのではないか。それはそのまま国全体に見られる。いろんな主義主張がある首長だけれども、地方の声は言ってきたのに居なくなった。これは「やばい」です。
−新型交付税が取り沙汰されますが、国に望むことは何でしょう?
あきれてものが言えません。「来年度の地方交付税は「今年度分は確保する」ということですが、それをコンクリートしておいて、人口と面積で配分するとなると、(雲南市の場合)6億円弱から15億円弱の幅で減ることになります。
地方交付税の歳入に占める比率は46.5%のですから、まさに「虎の子」。そんなものが本当に導入されるなら、平成17年度から1年かけて取り組み、実践してきた行財政改革の努力もパアになってしまう。
だから、交付税のあり方について考えるにあたっては、「国があるべき姿はこうだ」「地方があるべき姿はこうだ」「だから税金をこれだけ移す」「交付税はこれだけにする」とか、そういうことを、我々がもっと分かるように示した上でしてもらわないと・・・。
今の地方交付税の「三位一体改革」というのは、国の行財政改革を行うしわ寄せを地方に押し付けているようにしか受け止められない。だから、島根県としては、竹島問題のように主義・主張を強く出さないといけない。
−政策課題として、公共交通や医療問題への対応をお聞かせ下さい。
合併協議会の時から、553平方キロの広さをどうやって一体化を図るのかという点で、公共交通機関、道路ネットワークの整備を最重要課題にしてきました。
平成16年の11月の合併の1ヶ月前から、吉田町発、6町村をずっと通って雲南病院まで、病院の診察開始時刻や三刀屋高校・大東高校の授業開始に間に合うよう、一日7往復半の広域バスを走らせました。
それを見直し、さらに使いやすい広域バスにし、6町村それぞれが合併前に走らせていた町内バスとどうドッキングしていくのかが課題です。その施策は、政策企画部というところでやっています。
広域バスはさらに充実したいのですが、木次と大東の間のJRバスとの競合がありまして、これを走らせたことによって、JRさん曰く、「木次から大東、加茂までの朝の通勤通学の利用客がどんと減った」ということで、「何とか木次・大東間の広域バスを走らせるのをやめてくれ」という申し入れがありまして、そういうことを言われても、合併効果を出していかなくてはと、今協議中です。
できるだけJRの理解が得られるようなバス路線、バスは走らせますが、どうやってその批判をかわすかと協議しています。そういうJRさんとの競合が課題です。
医療については、この地域は、旧大原が松江医療圏域、旧飯石郡は出雲医療圏域に別れていましたが、平成8年に「木次の保健所をやめる」という話が出て、「だらず言え!」ということで、「雲南医療圏域をつくり、それを支える保健所というものを位置づけてください」という話をして、その中核病院を雲総合病院と位置づけています。
奥出雲病院(旧仁多病院)と飯南病院(旧頓原病院)をサテライトに位置づけ、雲南病院をさらに拠点病院として充実していきたいと思っていますが、医師不足の問題にさらされ、医師確保対策に懸命になっています。
そこで、やっぱりこれは雲南総合病院や雲南医療圏域の問題ではなくて、島根県全体の問題だと思います。だから、島根大学が中心になって、もっと島根の医療というものを県と島大医学部が、今まで以上に強力な連携を発揮してやっていただかないと、松江市、出雲市以外はお手上げです。
島根大学では医学部出身の県外勤務の医師にアンケートの聞き取り調査をして、帰りたい方は登録してもらうようにしていますが、本当にいいことだと思いますし、地域枠推薦入学の採用もいいことだと思います。
中山間地域の医療を学ぶという意味で、学生のみなさんが雲南病院を含めた中山間の病院に研修で派遣される。今までそういうことはしていなかったが、そうするとその学生さんが中山間の医療の大切さを肌身に感じ、今後の自分の考えを話し始めたということを医大の院長さんが言っておられた。いいことだなと思っています。
−最後に職員に期待することをお聞かせ下さい。
地域に信頼される職員をめざして欲しいということです。就任以来職員のみなさんに接遇日本一の雲南市をめざそうとお願いしています。
もう一つは、6町村それぞれのまちづくりの文化や職員かたぎがありますが、とにかく、「迅速」「正確」「親切」「丁寧」をモットーに仕事をと言っています。
具体的なことは、各部・各課の朝礼で、「おはようございます」「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」「ご苦労さまです」を2回言ってから仕事についてもらっています。電話の受け答えも、必ず「○○課の○○です!」ということを言うようにしてもらい、窓口の対応をしっかりやる。そうして、職員のみなさん一人ひとりが「信頼されているな」と実感できるようになると、やる気も出てきます。
雲南市では、徹底した情報開示、できるだけ早く健全財政を確保し、雲南市の一体化を図る。これを基本方針として掲げ、市民と行政の協働のまちづくり、定住環境の充実、安心生活の創造、教育と文化の振興、ふるさと産業の振興などの施策を実施しています。まちづくりのテーマは「いのちと神話が息づく新しいふるさとづくり」です。
合併は結婚です。人間の結婚は一対一ですけど、今回は6人が結婚しました。人間には離婚がありますが、我々には離婚はありません。
AさんとBさんが結婚して家庭ができると、その家風ができるのに3年ぐらいかかりますが、6人が結婚したとなるとやっぱり10年はかかります。それぐらいが、合併特例期間だろうと思います。10年も前から市があったような市民の求め方がありますが、やっぱり今は地ならし期間です。できるだけ早く地ならし期間を終え、雲南市らしい、雲南市ならではのまちづくりがされないといけない。
石の上にも3年と言いますから、地ならし期間は今年度ぐらいまでにして、平成19年度から飛躍したいです。
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